大阪電気通信大学

歩行状態を考慮したLiDARによる歩行者流動の再現手法に関する基礎的研究

概要

 近年,コロナ禍による感染防止のため,対面でのオープンキャンパスを控えるようになった.キャリタス進学が実施したアンケート[1]によると,来場型オープンキャンパスの参加率が減少し,オンライン型オープンキャンパスの参加率が増加している.ここで,オンラインを活用したデジタルキャンパスが注目されている.既存のデジタルキャンパス[2]では,時間と場所を選ぶ必要がなく,気軽に大学内を見学することができる.しかし,実際の学生や教員の動きがなく,学校選びに重要な学校生活の雰囲気や構内の賑やかさなどの情報が不足している.そのため,デジタルキャンパス上に歩行者の動きを再現する技術が必要とされている.

図1 大阪電気通信大学のVR[2]

既存研究

 既存研究では,3D空間上に歩行者流動を再現する手法[3]が提案されている.しかし,既存研究ではアバターが歩く動作にしか対応していないため,臨場感に欠ける結果となっている.そこで,既存研究の課題への対応方針として,LiDARで計測した点群データを用いて,移動軌跡から歩行状態を考慮して歩行者流動を再現することで臨場感を向上させる手法を提案する.

提案手法

 提案手法の処理フローを図2に示す.提案手法は,提案手法は,歩行者追跡機能,歩行者流動可視機能により構成される.入力データは,LiDARで計測した点群データと自作した建物の3Dデータとし,出力データは,歩行状態を考慮して推定した建物3Dデータ上における歩行者流動とする.

図2 提案手法

歩行者追跡機能

 本機能では,LiDARで計測した点群データから物体検知AIを用いて歩行者を検知し,歩行者の移動軌跡と検知開始時間を記録する.まず,図3に示すように物体検知AIであるLivox Detection v2.0[4]を用いて,歩行者を検知する.次に,検知した歩行者を追跡し,移動軌跡と検知開始時間を記録する.追跡終了時に,移動軌跡から等間隔に10個の座標値をサンプリングする.このサンプリングした座標間の移動軌跡を線形補間することで,滑らかな移動軌跡を出力する.

図3 歩行者の追跡結果

歩行者流動可視化機能

 本機能では,建物3Dデータ上に歩行状態を考慮して推定した歩行者流動を出力する.まず,図4に示すように建物の3Dデータ上に歩行者追跡機能で作成した歩行者の移動軌跡を基に最初の位置にアバターを設置する.次に,歩行者の移動軌跡から,座標値の距離を基に速度を求め,速度に合う歩容(止まる,歩く,走る)のアニメーションに切り替える(図5).最後に,次の位置までの距離と方向を基にアバターを移動させる.本機能により,既存手法[3]のアバターの歩行状態と移動速度が合致していない課題を解消する.

図4 アバターの設置
図5 歩行状態

実証実験

実験内容

 本実験では,4種類の動画像を対象に,臨場感に関するアンケートを実施した.用意した動画像は以下のとおりである.

  • 歩行状態と移動速度が一定でランダムに動かしたアバターをキャプチャした動画像(図6)
  • 一定時間内に通過した人数の統計から作成し,歩行状態と移動速度が一定で一方向に動かしたアバターをキャプチャした動画像(図7)
  • 既存手法[3]で出力した歩行者流動をキャプチャした動画像(図8)
  • 提案手法で出力した歩行者流動をキャプチャした動画像(図9)
図6 ランダム動画像
図7 統計動画像
図8 既存手法
図9 提案手法

 アンケートでは,図10に示すようにアバターの動きを以下に示す4つの問いを各動画像に対して用意した.加えて,違和感と日常感に関するアンケートを実施した.

  • アバターの動作(手足の動き方)に゙違和感があるか
  • 移動の仕方に゙違和感があるか
  • 実際の人の動きに見えるか
  • 日常感を感じるか
図10 アンケート内容

結果と考察

 各動画像のアンケート結果を図11・図12・図13・図14に示す.まず,アバターの動作に違和感があるかの問では,移動速度と歩容が合致している統計動画像と提案手法が,違和感が少ない結果となった.次に,移動の仕方に違和感があるかの問では,方向転換が急であるランダム動画像と移動速度と歩容が合致していない既存手法が,違和感がある結果となった.違和感と日常感に関するアンケート結果を表1・表2に示す.最も違和感がない動画像では,56人で提案手法となった.最も日常感がある動画像では,75人で提案手法となった.このことから提案手法の有用性を確認できた.

図11 ランダム動画像のアンケート結果
図12 統計動画像のアンケート結果
図13 既存手法のアンケート結果
図14 提案手法のアンケート結果
表1 違和感に関するアンケート結果

表2 日常感に関するアンケート結果

おわりに

 本研究では,LiDARを用いて,3D空間上に歩行者の歩行状態を考慮し,歩行者流動を再現することで臨場感を向上するための手法を提案した.そして,実証実験をとおして,提案手法の有用性を確認することができた.今後は,実際の人の動きや持ち物などを再現することで,より臨場感の向上を目指す.

参考文献

[1]キャリタス進学:コロナ禍での高校生のオープンキャンパス参加状況・受験への不安度,https://www.disc.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/09/shingakuchosa_202109.pdf,2024.7.15.
[2]大阪電気通信大学:大阪電気通信大学ホームページ, https://my.matterport.com/show/?m=x6YZzwybR7B&lang=jp&st=6000&help=0 
[3]大内誠悟,中原匡哉:LiDARを用いたデジタルキャンパスにおける臨場感の向上に関する研究,情報処理学会,第86回全国大会講演論文集,Vol.86,No.2,pp.725-726,2024.

作者プロフィール

大内誠悟

総合情報学部 情報学科 4年生

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